写真・図版
上から、「篠崎」8代目社長の篠崎倫明(みちあき)氏、クリストファー・ペレグリーニ氏、スティーブン・ライマン氏。3人が連携してタカミネ・ウイスキーをつくり、米国に持ち込んだ=2024年12月、ニューヨーク・タイムズ

Americans Are Warming to a Different Kind of Japanese Whiskey

 1891年2月のある午後、高峰譲吉という日本人化学者がイリノイ州ピオリアに列車で到着した。当時、米国最大の酒造会社だった「ディスティリング・アンド・キャトル・フィーディング・カンパニー」の招きで訪れた彼は、麴(こうじ)というカビの一種を使って発酵を促すという、革命的ともいえるウイスキー製法を携えてやって来た。

 彼の製法は、西洋の蒸留所で一般的に使用されている麦芽製造技術に代わるもので、生産量を10%もしくはそれ以上増やし、蒸留所と彼自身に数百万ドルの利益を約束するものだった。

 しかし、通称「ウイスキー・トラスト」と呼ばれたこの会社は汚職に苦しめられ、彼が生産を開始する前に倒産した。高峰博士と高峰式製法は、ほとんど忘れ去られてしまった。

 しかし最近になって、麴ウイスキーが、米国の酒屋や高級なバーカウンターの棚に数多く並ぶようになった。今回は、コストパフォーマンスがよいからではなく、味わいがよいからだ。この製法により、風味の豊かさと優美な花のような香りのバランスがよく、明らかにウイスキーだが、まったく独特な酒が生み出されるのだ。

  • 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」

ジャパニーズウイスキーが海外で人気です。NYTの記事は、麴で作ったウイスキーを取り上げています。約130年前、日本人化学者が見いだした製法がもとになっているようです。

 「麴ウイスキーは口当たりが…

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